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だれ​か​が​設計?

サハラギンアリの熱シールド

サハラギンアリの熱シールド

サハラギンアリ(Cataglyphis bombycina)は,最も​暑さ​に​強い​陸生​生物​に​数え​られ​ます。日中​この​アリ​は,敵​たち​が​サハラ​の​炎熱​から​逃れ​て​物陰​に​身​を​潜め​て​いる​とき​に​巣穴​から​出​て​き​て,素早く​餌​を​探し​ます。獲物​に​なる​の​は,強烈​な​暑さ​で​死ん​だ​虫​たち​です。

[50]μ​m

考え​て​み​て​ください: サハラギンアリ​の​強み​は,その​熱​シールド​に​あり​ます。それ​は​体​の​背面​と​側面​を​覆う​特別​な​体毛​と,体​の​腹面​の​体毛​の​ない​部分​から​成っ​て​い​ます。銀色​に​光っ​て​見える​体毛​は,極小​の​三角​柱状​で,中​が​空洞​に​なっ​て​い​ます。外​に​向い​た​2​つ​の​面​の​表面​に​は​縦​方向​に​微小​な​凹凸​が​走っ​て​おり,内​に​向い​た​もう​1​面​の​表面​は​平坦​に​なっ​て​い​ます。この​構造​に​は​2​つ​の​利点​が​あり​ます。太陽​光線​の​うち​の​可視​光線​および​近​赤外​線​を​反射​する​こと​と,周囲​から​吸収​し​た​熱​を​体外​に​逃がす​こと​です。一方,体毛​の​ない​腹面​は,砂漠​の​地表​から​発せ​られる,中​赤外​領域​の​熱線​を​反射​する​の​です。 *

[10]μ​m

サハラギンアリ​は,この​熱​シールド​の​おかげ​で​体温​を,耐え​られる​上限​の​53.6​℃​以下​に​保つ​こと​が​でき​ます。研究​者​たち​は​この​小さな​昆虫​に​ヒント​を​得​て,特殊​な​コーティング​の​開発​に​取り組ん​で​い​ます。それ​に​より,受動​冷却,つまり​送風​機​など​の​装置​を​使わ​ない​冷却​システム​の​向上​を​目指し​て​いる​の​です。

どう​思わ​れ​ます​か: サハラギンアリ​の​熱​シールド​は​進化​に​よる​もの​でしょ​う​か。それとも,だれ​か​が​設計​し​た​の​でしょ​う​か。

^ 4節 この​アリ​は​ほか​に​も,体内​に​ある,高熱​で​も​容易​に​分解​さ​れ​ない​特殊​な​タンパク質,体​を​持ち上げ​て​熱い​砂​から​離し,速く​歩く​こと​を​可能​に​する​長い​足,そして,最短​距離​で​巣穴​に​戻る​の​に​役立つ​見事​な​ナビゲーション​能力​など​の​強み​を​持っ​て​い​ます。